5x歳・役員運転手がAIと個人開発を始めた話——4ヶ月間の軌跡と4つのアプリ

「プログラミングなんて、自分には関係ない話だと思っていた。」

正直に言うと、半年前の自分はそう思っていた。55歳。職業は役員運転手。コードを書いたことはゼロ。パソコンはメールと調べものに使う程度。

それが今、4つのアプリを作っている。

WordPressのブログが動いている。GitHubにコードが上がっている。Claudeと会話しながら、毎日少しずつ何かが形になっている。

「50代でもできるの?」と聞かれたら、答えはYesだと思う。ただし「自分でゴリゴリコードを書く」やり方ではなく、今の時代に合ったやり方で、という条件つきで。

この記事は、その4ヶ月間の記録だ。


Contents

なぜ始めたのか

きっかけは仕事だった。

勤め先の会社には30棟以上のビルがある。各ビルの状態——エレベーターは動いているか、設備に異常はないか——を管理する仕組みが、Excelと電話に頼っていた。

「これ、システムにできないのか」と思った。誰かに頼むとお金がかかる。自分でやれないか。そう考えたとき、「AIを使えばコードが書けるらしい」という話を思い出した。

もともとパソコンは好きだった。新しいものへの好奇心はある。ただ、「プログラミング」という言葉に長年、高い壁を感じていた。

調べてみると、2024〜2025年ごろからAIの力でコードを書く「AIコーディング」というやり方が広がっていた。人間は「何を作りたいか」を伝える。コードはAIが書く。人間はディレクターになる。

「それなら自分にもできるかもしれない」

そう思ったのが、全ての始まりだった。


最初の1ヶ月——「まず動かす」だけで精一杯

最初にやったのは環境構築だ。

CursorというAI機能つきのエディタ、Claude Code、Aider、LM Studio。これらのツールをMacBook Air(M4、24GB)に入れた。

最初は何が何だかわからなかった。「ターミナル」というアプリを開くだけで怖かった。コマンドを打ち間違えるたびに、何かを壊してしまうのではないかと不安になった。

今思えば笑い話だが、当時は本当にそう感じていた。

そんな中でも、少しずつ「わかること」が増えていった。

  • ls でフォルダの中身が見える
  • cd でフォルダを移動できる
  • エラーが出てもClaude Codeに貼り付けると直し方を教えてくれる

「詰まったらAIに聞く」というサイクルが体に馴染んできたのが、最初の大きな転換点だった。

この時期に学んだ一番大事なことは、「完全に理解してから次へ進む必要はない」ということだ。わからなくても動かしてみる。エラーが出たら聞く。それだけでいい。


最初のプロジェクト——texxxx-portal

最初に作り始めたのが tensho-portal、会社のビル状態管理ポータルだ。

使った技術スタックはこうだ。

  • Next.js(フロントエンド:画面)
  • Supabase(データベース)
  • FastAPI(バックエンド:裏側の処理)
  • Ollama(ローカルLLM:AIの予測機能)

最初はこれらの言葉の意味すらわからなかった。「Next.jsって何?」「Supabaseって何をするもの?」という状態から始まった。

それでも、Claude Codeに「ビル一覧を表示する画面を作って」と伝えると、コードが生成される。「このエラーを直して」と貼り付けると、原因と解決策が返ってくる。

3ヶ月かけて、Phase 1から3まで完成した。

  • Phase 1: ビル一覧・詳細画面、データベース設計
  • Phase 2: 履歴管理(ステータスの変化を記録する)
  • Phase 3: LLM予測エージェント(AIがビルの異常を予測する)

社内で担当者に説明できるレベルまで仕上がり、今は一時停止中。次は認証機能(ログインの仕組み)を加えて、本番運用に近づける予定だ。

この経験で学んだこと

開発を進める中で、「AI時代のコーディングで失敗しやすいパターン」 を身をもって体験した。

一番大きな失敗は「AIに丸投げして設計を放棄すること」だ。

AIは「優秀な現場の兵士」だが、「何を作るか」という戦略は人間が決めなければならない。ユビキタス言語表(用語の定義一覧)を最初に作っておかないと、AIが吐き出すコードと自分のイメージがズレていく。

AIは道具だ。使う人間の設計力が、そのまま出力の質に直結する。

もう一つ痛感したのは、「AIは過去のチャットを覚えていない」 という現実だ。毎回ゼロから説明する必要がある。これを解決するのが CLAUDE.md というファイルで、プロジェクトのルールや背景をここに書いておくと、AIが毎回読み込んでくれる。

このファイルを整えることは、どんな高性能なMacを買うよりも費用対効果が高いと今は確信している。


2つ目のアプリ——「昨日なにした?」

texxx-portalを作りながら、もう一つのアイデアが浮かんだ。

「前日の出来事から、自分でも気づいていないモヤモヤの正体を言語化してくれるアプリがあったら面白いんじゃないか」

思いついた翌日、Claudeと話しながら作り始めた。

アプリの名前は 「昨日なにした?」。使い方はシンプルだ。

  1. 昨日あったことを自由に入力する
  2. AIが4つの視点から「モヤモヤの正体」を分析して返してくれる
    • モヤモヤの正体(一言で)
    • なぜそう感じているのか
    • 気づいていなかった視点
    • このモヤモヤが伝えようとしていること

Claude APIを使い、React(JSX)でWeb版を1日で完成させた。

将来的にはiOSアプリとしてApp Storeに公開する予定で、ロードマップも固まっている。Expo(ReactをiOSに変換するツール)を使えば、Web版をそのままiOS化できる。

このアプリを作ってわかったのは、「アプリは小さくていい」 ということだ。tensho-portalは複雑で大きなシステムだが、「昨日なにした?」は1画面・1機能・1日で完成した。この「小さく作って動かす」サイクルが、学習の速度を一番上げてくれた。


3つ目のシステム——家計管理

「家の出費を把握したい」という個人的な問題から生まれたのが家計管理システムだ。

楽天カードの明細CSVとAmazonの注文履歴CSVを読み込み、自動でカテゴリ分類して集計するPythonスクリプトを作った。さらにGmailやiCloudからの転送メールを自動取り込みする機能(mail_watcher.py)も追加した。

実際に処理したデータはこうだ。

  • 楽天カード2月分:約xxx件、xxxxxx円
  • Amazon1〜2月:xxxx件、xxxxxx円

これを手作業で集計していたら何時間もかかる。コードを書いてしまえば、CSVをフォルダに入れるだけで終わる。

「自分が毎日困っていることをコードで解決する」——これが個人開発の一番の醍醐味だとこのプロジェクトで実感した。


4つ目のアイデア——電車混雑予測アプリ

まだ仮説検証の段階だが、最も「面白い問題」に挑んでいるのがこれだ。

電車が遅延したとき、次に来る電車は大体混んでいる。でも稀に空いている電車が来ることがある。それを予測できないか、というアイデアだ。

一番の壁は「リアルタイムの混雑データを誰が持っているか」という問題だ。鉄道会社は持っているが、外部には公開していない。

現実的な突破口として考えているのは、過去の遅延情報とSNSの投稿データを組み合わせて「このパターンの遅延なら、〇分後の電車が空く傾向がある」という統計モデルを作ることだ。

ODPTという公共交通データのAPIを使えば、遅延情報と時刻表データは無料で取得できる。まずここから始めようとしている。


機材のこと——Mac miniを注文した

開発を始めて数ヶ月が経った頃、「ローカルLLM」というものを知った。

通常、AIはインターネット越しにクラウドのサーバーで動いている。一方、ローカルLLMは自分のMacの中でAIを動かす。クラウドに情報を送らないのでプライバシーが守れる。APIのコストもかからない。

ただし、動かすためには十分なメモリが必要だ。

MacBook Air M4の24GBでも試したが、14Bサイズのモデルを動かすのが限界で、複雑な開発補助には少し物足りなかった。

そこで決断したのが Mac mini M4 Pro 48GB の購入だ(7月中旬到着予定)。

この判断に至るまで、実は何度か「もっと高性能な機材を買いたい」という誘惑があった。41万円のMacBook Pro 14″M5 Pro 64GBが新品同様で売られているのを見つけたとき、前日のAiderでの失敗と重なって「Air 24GBの限界を感じた」という気持ちになった。

そのときClaudeと話して気づいた。

「今の迷いは機材の必要性ではなく、7月まで待つという時間的な苦痛からきている」

それを自分で認識できたとき、判断がクリアになった。Mac miniで決定、変更なし。

この「判断を誤りやすいタイミング」を言語化してもらえたことは、高性能機材を買うより価値があったかもしれない。


50代・初学者がAI開発を始めて気づいたこと

4ヶ月間を振り返ると、いくつかの「思い込みを外せた」ことが大きかった。

思い込み①「プログラミングは若い人がするもの」

AIが登場したことで、この前提は崩れた。コードを書く力よりも「何を作りたいか」「何が問題か」を整理する力の方が重要になっている。そして問題を整理する力は、経験を積んだ人間の方が持っていることが多い。

思い込み②「動かなければ意味がない」

最初は「完璧に動くものを作ってから公開しよう」と思っていた。でも実際は、動かないこと、エラーが出ること、詰まること——全てが学習になっている。ブログのタイトルを「試行錯誤メモ」にしたのはそのためだ。完璧でなくていい。

思い込み③「環境が整ってから始めよう」

Mac miniが届く7月まで開発を止めることもできた。でも「待つ時間を育てる時間に変える」という発想で動き続けたことで、手元のAir 24GBでも4つのプロジェクトが動いている。

今の自分に足りないものは機材ではなく、使いこなす経験値だ。


これから

7月にMac miniが届いたら、3台構成(MacBook Air+iMac+Mac mini)でローカルLLMをサーバーとして動かす環境を作る予定だ。

tensho-portalは認証機能を加えて本番に近い状態に。「昨日なにした?」はiOS化に進む。電車アプリはODPT APIでデータを取り始める。家計管理システムはクラウドに上げて外出先でも見られるようにする。

やりたいことはたくさんある。時間は限られている。でも「週23時間(平日3時間×5+土日4時間×2)」というリズムが体に馴染んできた今、焦りよりも楽しさの方が大きい。


「50代でも始められるか?」

始められる。というより、積み上げてきた人生経験がそのまま武器になる時代が来ていると感じている。

「何が問題か」を見つける力。人と話して要件を整理する力。諦めずに続ける力。これらは若い頃より今の自分の方が持っている。

コードは書けなくていい。AIが書いてくれる。あなたがやるのは、「何を作るか」を考えることだけだ。


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このブログでは、ローカルLLM・Aider・個人開発の試行錯誤をそのまま記録しています。